第1章 総務省 平成29年度電波利用調査結果 714MHz以下

2018年7月27日作成

2019年3月10日 4月10日 12月4日 加筆訂正 

 

第1章 平成29年度電波利用調査結果 714MHz以下の周波数利用状況

 

  2018年5月26日、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課企画係より、題記の調査結果を公表してパブリック

コメントの意見募集を行い、その集計結果を6月20日に公表しました。

総務省の電波利用の調査は、全周波数帯を3区分

1) 714MHz以下の周波数帯

2) 714MHzを超え3.4GHz以下の周波数帯

3) 3.4GHzを超える周波数帯

に分けて3年周期でその調査して結果を順次毎年公表しています。今回は前回平成26年度の調査結果に続いて行われたものです。この調査は、平成15年から電波法第26条の2の規定に基づき、総務省電波利用のデータベースの分析とアマチュア無線局以外の無線局免許人に実利用状況の回答書を郵送と回収を実施して、その分析結果より周波数ごとの無線局の数、利用時間(頻度)を集計しています。

言い換えると、

この調査は昨今報道されている各省庁が行う統計調査の周波数利用版と言えるものです。

 

調査結果の詳細は、以下URLを参照していただくとして、周波数区分ごとの調査結果を総務省は以下のように総括しています。

 

<https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/research/result/h29/H29_Hyouka_All.pdf>

<http://www.soumu.go.jp/main_content/000552590.pdf>

 

第1-1 平成29年度電波利用調査結果の総務省の総括結果

 

1.「総無線局数は、3,500,305 局で、このうち26.175MHz以下の総無線局数は、319,722局、このうち       アマチュア局は317,622局で全体の98.6%を占めている」

 

2. 「総無線局数は、3,500,305 局で、このうち26.175MHz以下の総無線局数は、319,722局で全体の        7.4%、50~222MHzの総無線局数は1,154,974局で全体の26.5%、335.4~714MHz以下の総無線局        数は、2,459,558局で全体の56.4%となり、50~714MHzの総無線局数が全体の83%を占めている」

 

3.「アマチュア局は、26.175MHz以下の無線局数が圧倒的に多く、かつ周波数利用率が高い」

 

4.「26.175MHz以下の周波数では、電離層反射等による長距離通信が可能であるという特性を有し、      中波放送、短波放送、航空通信システム、船舶通信システム等の陸上、海上及び航空の各分野の多      様で重要な電波利用システムで利用されていること、また、船舶無線及び航空無線のシステムでは    今後も一定の需要が見込まれていることを踏まえ判断すると、適切に利用されていると認められる」

 

  我々アマチュア無線で交信している立場(実感)では、714MHz以下のうち26.175MHz以下の周波数帯域は約3%なので、狭い周波数帯域の中で多くのアマチュア局が利用して頻度が高くなるので当然の結果と言えましょう。一方で26.175MHz以下のアマチュアバンドの総帯域の累計は1.452MHzとなり、26.175MHzの6%以下の帯域だけで317.622局のアマチュアが利用し、26.175MHzのうち94%の帯域を中波、短波放送と航空、船舶通信の合計約5000局の無線局で利用していることになるのではないかと思います。

 

第1-2 平成29年度電波利用調査結果に対するアマチュア局が提出した意見の概要

 

 放送や航空、船舶通信の重要性鑑み、近年の無線局の周波数がより高い周波数に移行している現状を考慮すると、総務省が総括している「適切な利用状況」とは言えないのではないでしょうか。

 この調査結果について89件のアマチュア無線局の個人と2件の法人JARLと日本ローバンド拡大促進協会から意見が寄せられました。意見の内容は、海外のアマチュア局と狭帯域デジタル通信で交信する場合、使用可能周波数(バンドプラン)が異なる1.8MHz帯と3.5~3.8MHz帯のバンド拡張と2015年の国際無線通信会議(WRC-15)で承認された5MHz帯(60m)のアマチュアバンド解放に関係するものでした。

 

<http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000270.html>

<http://www.dempa-times.co.jp/gyosei/docs/1527227997_89546.html>

<http://www.arrl.org/news/world-radiocommunication-conference-approves-global-60-meter-allocation>

<http://www.soumu.go.jp/main_content/000284124.pdf>

 

第1-3 パブリックコメントへの総務省の考え

 

 これらアマチュア無線局個人とJARLと日本ローバンド拡大促進協会の提出した意見への回答は、

 

「ご指摘の(3)総合評価の『適切に利用されている』との評価案は、アマチュア無線のほか船舶無線や航空無線等を含む26.175 MHz以下の周波数帯に係るものです。 船舶無線や航空無線は、長距離通信として人命にも関わる無線システムであり、国際的に共通な周波数での利用もされています。平成29年度電波の利用状況調査の結果、無線局数が前回調査結果に比べて減少傾向にあるものの、HF帯船舶無線は2,352局、HF帯ラジオブイは831局が利用されており一定の需要があること、また平成25年に海洋レーダーの技術的条件を策定し新たな用途への需要が見込まれることなどを踏まえて、適切に利用されていると評価しています。 従って、原案どおりといたします。 また、1.8MHz帯、3.5MHz帯及び3.8MHz帯のアマチュア業務への周波数の分配に係るご意見については、既存の業務用無線の動向等を踏まえ検討してまいります」

 

 この回答が本当に調査結果に基づいているのかについて電波利用のデータベース、周波数公開制度の利用により考察したいと思います。

特に昨今各省庁が行う各種統計データの信頼性が問題になっています。各省庁の統計を所管する総務省には、実際の周波数利用を確認して周波数の有効利用を率先して実行していただきたいと思います。