第3章 平成29年度電波利用調査結果の考察 3.5MHz帯

 

3-8 35003900kHz 周波数利用状況

 

 それでは、これ以外の周波数ではどのようになっているのでしょうか。

 1.8MHz帯同様に電波利用のデータベースより、無線局の有無を調べてみました。

 

1) 3575~3599kHz:1次業務 公共業務、一般業

   この周波数を利用している無線局はないようです。

   GMDSSへの移行が完了したものと思われます

 

2) 3612~3640kHz:1次業務 公共業務、一般業務

   前記したように3622.5kHzで気象庁JMHが F3C 帯域幅6,2kHz 5kWで天気図放送をしています

   3622.5kHzは6.2kHzのF3C周波数帯域の中心ですので、実帯域は3619~3626kHzとなります。また3612.5kHz

   には、水産高校の航海実習船3隻にA1A 400W 500Hzの免許が残っています。

   この周波数で交信する相手方の海岸局はすでにありませんので、免許だけが残っている状態です。

   ・水産高校練習船(JLRE)と通信の相手方の海岸局(JSB)の免許情報

    小樽水産高校 教育海岸局 JSB(国内唯一の教育海岸局)JSBには3612.5kHzの指定がありません。

<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?pageID=4&IT=J&DFCD=0000443996&DD=1&styleNumber=21>

   小樽水産高校 航海実習船 北鳳丸 JLRE 3612.5kHz A1A 400Wの指定が残っている。

<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?pageID=4&IT=J&DFCD=0000428817&DD=1&styleNumber=12>

 

3) 3640~3680kHz:1次業務 公共業務、一般業務

   この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

   GMDSSへの移行が完了したものと思われます

 

4) 3687~3702khz:1次業務 公共業務、一般業務

  この周波数については、3687~3699kHz と3701~3702kHzに分れて無線局の免許があります。

   ① 3687~3699kHz と3701~3702kHzには無線局はありません。

   ② 3700kHzに一般業務の船舶局と通信の相手方となる海岸局の免許があります。     

      3700kHz A1A 500W 500Hz帯域で高知県漁業協同組合JFMと鹿児島県漁業協同組合JFXが運営す

      る海岸局に所属するマグロ、カツオ漁船66隻との通信で利用し、この船舶の中には、

      水産高校の練習船も含まれていて定時通信を行っています。

 

      ・漁船側 66隻にA1A 500Hz 100~250W の免許があります。

<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?SC=1&pageID=3&SelectID=5&CONFIRM=0&OW=MS+0&IT=&HC=&HV=&MK=&TSNJK=&KHS=&FF=3700&TF=3701&HZ=2&NA=&AS=&DFY=&DFM=&DFD=&DTY=&DTM=&DTD=&SK=2&DC>

  

      ・海岸局2局の免許があります。

<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?SC=1&pageID=3&SelectID=5&CONFIRM=0&OW=FC+0&IT=&HC=&HV=&MK=&TSNJK=&KHS=&FF=3700&TF=3701&HZ=2>

 

 高知県漁業協同組合  <http://bit.ly/2F0dRRE> <http://bit.ly/2TBM5Ff> 

  鹿児島県漁業協同組合 ・<http://www.jfx1.or.jp/>

 遠洋かつお・まぐろ漁業許可船名簿 <http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/sitei/pdf/h2306_enkama.pdf>

  船舶局の局名録 <http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/1.pdf>

                               ・<http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/4.pdf>

   海岸局の局名録  <http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/3-3.pdf>

 

5) 3712~3745kHz:1次業務 公共業務、一般業務

   3739kHzに高知県漁業協同組合、鹿児島県漁業協同組合に所属するマグロ、カツオ漁船68隻でSSB(J3E) 

   50~125W  3kHz帯域の免許があります。

   この周波数は、漁船間の連絡用として利用されているのではないかと思います。<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?SC=1&pageID=3&SelectID=5&CONFIRM=0&OW=MS+0&IT=&HC=&HV=&MK=&TSNJK=&KHS=&FF=3739&TF=3740&HZ=2&NA=&AS=&DFY=&DFM=&DFD=&DTY=&DTM=&DTD=&SK=2&DC>

    3712~3737.5kHz / 3740.5~3745kHzを利用している無線局はないと推定されます。

 

6) 3770~3791kHz:1次業務 電気通信業務、公共業務、一般業務

   この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

   GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

 

7) 3805~3900kHz:1次業務 公共業務、一般業務

   この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

  GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

 

8) GMDSS移行後の船舶無線電話の周波数表より、3500-3900kHzのアマチュアバンドを使用していない。

  <https://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/share/pdf/b_31.pdf>

       <https://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/share/pdf/b_32-33.pdf>

 

3-9  総務省がパブリックコメントの主張している海洋レーダーについて

 

海洋レーダーとは

 日本は周囲を海に囲まれていることから、船舶は重要な輸送手段です。この船舶の安全な航行を行うために、

航行中の船舶相互の位置を確認するレーダーを使用しています。

加えてさらに安全な船舶の航行を行うために、短波の電波を使用して海洋の波浪状況と昨今問題となっている

海洋浮遊物(プラスチックごみ)を検知する目的として海洋レーダーの技術検討が行われています。

 海洋レーダーの説明  <http://www.jana.or.jp/denko/data/24_2_1.pdf>

 

 海洋レーダーを実運用する周波数帯候補として3000~4000kHzの周波数を検討しているようです。

総務省がパブリックコメントによると、海洋レーダーの周波数利用がアマチュアバンドの拡張ができない理由となっています。

・海洋レーダーの技術的条件審議開始 <http://www.soumu.go.jp/main_content/000167025.pdf>

・海洋レーダーの技術的条件の検討の進め方 <http://www.soumu.go.jp/main_content/000167026.pdf>

・海洋レーダーの技術的条件の方針素案 <http://www.soumu.go.jp/main_content/000167028.pdf>

 海洋レーダーは、短波の電波伝搬の性質から国際協調が求められていて、その運用指針となっている

のは、2012年の国際無線通信会議(WRC-12)で公開された RESOLUTION 612  Use of service between 3 and 50MHz to support oceanographic Rader operations があります。

・<http://www.soumu.go.jp/main_content/000167029.pdf>

情報通信審議会 情報通信技術分科会 航空・海上無線通信委員会 海洋レーダー作業班が策定した

海洋レーダーの技術的条件によれば、

<http://www.soumu.go.jp/main_content/000167025.pdf>

より、最も近い周波数は4438~4488kHzとなり3500~3900kHzのアマチュアバンドは含まれていません。

WRC-12 RESOLUTION 612の技術基準の詳細を見ると、

  1) 実効輻射電力は、25dBW(316W)を超えないこと

  2) 20分を超えない範囲でモールス符号により、発信元が特定できるように識別信号を発信する

  3) 5±1MHzの周波数では、海上を含めて920kmの範囲の関係国と周波数調整を行うこと

  4) 3) は使用するアンテナのバックローブ特性を踏まえて決められる

以上より海洋レーダーの周波数帯は、そのタイトルの周波数帯は3~50MHzとしていますが、実際WRC-12

で割当られている周波数にはアマチュアバンドの3500~3900kHzは含まれていません。

また海洋レーダーの仕組みから容易に推測できるのは、アマチュアであればだれもが知っている

OTHレーダー(通称ウッドペッカー)と基本的に同じです。したがって、仮に日本がアマチュアバンドを

含む3500~3900kHz の周波数で海洋レーダーの実用化を行うと、「日本版ウッドペッカー」となること

から、短波の国際協調利用の観点で日本だけが3500~3900kHz の周波数を海洋レーダーに使用できる可

能性は非常に低いと思います

・<http://www.nict.go.jp/publication/kiho/29/151/Kiho_Vol29_No151_pp447-465.pdf>

  

第3-10 3500~3900kHzのまとめ

 

1) 3575~3599kHz この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

   GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

2) 3612~3680kHz 3622.5kHzで気象庁がF1Bファクシミリで天気図の放送を行っています。

   JMHの周波数帯域 3619~ 3624kHz  帯域幅6.2kHz F3C 5kW

   3612.5kHzで北海道と岩手県の水産高校の航海練習船3隻にA1A 500Hz 400Wの免許があります。

      無線局の有効期限は「無期限」であるが、この周波数で通信する相手方の海岸局がないため事実上この周波数

  は使用していないと推定されます。この船舶の送信機は旧スプリアス規定と推定される

     ため、今後この周波数の指定は免許上もなくなると推定されます。

3)  3640~3680kHzまでの周波数には免許された無線局はないと推定されます。

    GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

4)  3687~3702khz 高知県と鹿児島県の漁業協同組合に所属している漁船は、漁業無線海岸局

    高知県JFM 鹿児島県 JFXとの定時通信を行っています。

    3700kHz A1A 500Hz 400Wの免許があります。]

    所属船 68隻にA1A 500Hz 100~200W の免許があります。

       以上合計 70局の免許があります。

5) 3687~3799kHzの周波数を利用している無線局はないと推定されます。

   GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

6)  3739kHz 高知県、鹿児島県の漁業協同組合に所属している漁船 69隻は、3739kHz SSB (J3E) 3kHz

  で50~125Wの免許があります。

    3739kHzはSSB(USB)の中心周波数であるため、周波数帯域は 3737.5~3740.5kHzとなります。

    したがって、3712~3737kHz / 3741~3745kHzの周波数を利用している無線局はないと推定されます。

 

7) 3770~3791kHz この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

     GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

 

8) 3805~3900kHz この周波数を利用している無線局はないと推定されます。

     GMDSSへの移行が完了したものと思われます。

 

9) 短波の伝搬上その利用には国際協調が必要であるため、3500~3900kHz の周波数を海洋レーダー用に使用する

   ことは、WRC-12 の勧告内容から判断して非常に難しいと思います。

  ・<http://www.ituaj.jp/archive/2013_04-5_sl-mci.pdf>

 

10) 海上保安庁が使用する中波、短波の周波数は本章最初の資料より、3500~3900kHz を使用していない。

 

11) GMDSS移行後の船舶無線電話の周波数表より、3500-3900kHzのアマチュアバンドを使用していない。

  <https://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/share/pdf/b_31.pdf>

       <https://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/share/pdf/b_32-33.pdf>

 

 3-11 35003900kHz 1次業務 公共、一般業務無線局の免許を考慮した

     バンドプラン(私案)

 

1) 現在公共、一般業務無線局の割り当てのないと推定される3575~3599kHzと3612~3680kHzについて

 3575~3599kHzと3626~3680kHzが利用できる可能性は高いのではないでしょうか。

  この結果デジタルのDX交信での不都合は大幅に改善するのではないでしょうか。

 

2) 現在公共、一般業務無線局の割り当てのないと推定される3741~3900kHzについてSSBの交信においても、

   3800~3900kHzが利用できることでDX交信の機会が増え、コンテストでの得点向上ができると思います。