第3章 平成29年電波利用調査結果の考察 1.8MHz帯

 

第3章 平成29年度電波利用調査結果の考察

 

  私は、電波利用のホームページで公開されている各周波数帯の国際分配、国内分配とその利用目的別に分類され

公開されている電波利用のデータベースより短波帯を主に実際に免許されている無線局を検索してその割当状況を

調べて、第1-3に記載した平成29年度電波利用調査結果に対するパブリックコメントに対する総務省の見解と実際

の無線局への周波数割り当てについて調べてみました。

 

★電波利用のデータベースにおける重要事項★

 

電波利用のデータベースでは、電波法施行規則第11条の2で指定されている、自衛隊、警察および

各自治体や公共交通などの公共業務で使用する周波数は含まれていないことになっています。

したがってこの考察の調査ではこれらの無線局の周波数利用状況は把握できません。

周波数分配はITUが定めた割当原則に基づき最終的な周波数割当権限は、主管庁である総務省にあり

総務省の判断によって周波数割当を決めています。

 

平成29年度電波利用の調査結果 714MHz以下の無線局数の集計データ

<https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/research/result/h29/H29_26.175_PDF.pdf>

 

無線局の利用目的、通信事項ごとに分類され、この分類の中には公共業務コードPUB-EMB PUB-FDA

などデータベースから検索できない無線局の局数が掲載されています。

無線局コード表 <https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a72aa65151.html>

なお、PUB-EMBは外交に関する公共業務で重要無線局数が4局関東管区で割当されています。

 

  このように、具体的周波数はわかりませんがどの公共業務の無線局が割当されているかがわかり

ます。PUB-EMBの具体的周波数はわかりませんが、その電波形式がA1A/F1Bであることから、

4630kHzなどの非常通信周波数である可能性が非常に高いと思われます。またPUB-EMB1局

電波形式J7Dは、主に自衛隊が使用している新無線通信システムと思われます。

(ソフトウエア無線・コグニティブ無線  設計:日本電気/三菱電機)

設計仕様書の概要は自衛隊の調達機器関連のWebで公開されています

  <https://jpn.nec.com/info-square/mitatv/discover/20/index.html>

  <https://www.mod.go.jp/msdf/supply/shiyosho/mks-j-51036-8_01.pdf> 

 

公共業務の参考情報

海上保安庁が運用する海岸局は使用する中波、短波の周波数は以下のように公開されています。

この周波数は海上保安庁海岸局の運用周波数であり、船舶間通信の周波数までは含まれていません

 <https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/3-1.pdf>

  

考察した周波数は、1.8MHzと3.5~3.8MHz帯としました。この理由は、現在盛んに運用されているデジタル通信に

おいて、日本のアマチュア局が使用できる周波数とそのバンドプランが海外局と異なるためこの周波数を運用する

アマチュア局の方々が非常に苦労されているためです。

 日本以外の主要国の(欧米主要国だけではなく、アジアの主要国例えば中国、インド、インドネシア、中東諸国)

アマチュア局は、ITUが定めたRegion1~Region3地域の周波数割当にしたがいアマチュア業務に周波数を分配

して、国際アマチュア無線連合IARUが定めたバンドプランにしたがってアマチュア局が交信しています。

  

第3-1 1800~2000kHz 帯のITU が定める地域ごとの違い

  

  1.8MHz帯では、国際分配の地域区分となるRegion1(欧州、アフリカ、中近東) 1810~1850kHzがアマチュア専用の1次業務、Region2(南北中南米)1800~1850kHzがアマチュア専用の1次業務 1850~2000kHzがアマチュア、固定、主に海上移動、無線標定業務、Region3(日本を含むアジア、オセアニア) は、1800~2000kHzがアマチュア、固定、主に海上移動、無線標定業務に割当られています。

 海上を移動する船舶の自局の位置を取得する方法として現在ではGPSを利用することができますが、現在の周波数分配が決まった1950年頃ではロランA(1997年廃止) ロランC(2015年に廃止)は非常に重要な位置計測方法であり、戦後世界最大の船舶を所有していた日本では、重要な周波数となっていました。また同時に主にマグロはえ縄漁用として使用した漁業用ラジオブイは現在もこの周波数帯を使用しています。このため1.8MHz帯は、1954年のアマチュア無線再開後唯一バンド解放がされていなかった周波数帯でした。

  

  この難題に対して当時の偉大なアマチュア局OT/OMは、アマチュア無線が再開した1954年当初から郵政省に繰り返し指定周波数の許可を申請し、同時の郵政大臣へ直接嘆願書を提出して実地証明として1963年清水港に実験局JG2Aを開設してロランAへの干渉がないことを証明した歴史がある周波数です。

 ・<http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/14toudaibu/02mitisirube/02dennpa/roranc.html>

 <http://park1.wakwak.com/~ja7ao/160his1.htm>

 

 時代をさらにさかのぼり無線通信の黎明期では、長波、中波が無線通信の全盛期であった時代、アマチュア局は波長200m以下の未開拓の短波帯に強制的に移行させられたにも関わらず、アマチュア局の偉大な先人は電離層によって低電力で遠距離の通信に適していることを発見した、開拓者精神が残る周波数です。

  

第3-2 1800~2000kHz 国内周波数割当計画での割当状況

 

国内割当規則

      1800~1810kHz:公共業務、一般業務

      1810~1825kHz:アマチュア業務

      1825~1907.5kHz:公共業務、一般業務、2次業務 無線標定(漁業用ラジオブイ)

      1907.5~1912.5kHz :アマチュア業務

      1912.5~2000kHz:公共業務、一般業務、2次業務 無線標定(漁業用ラジオブイ)

  

    以下の電波利用のURLより、「周波数割当計画」を確認しました。

       <https://www.tele.soumu.go.jp/area/AreaallsearchServlet?FLOW=1790&FHIGH=1920&HZ=2&YOUT=000&LOCT=000&S_CNT=1&E_CNT=10&P_CNT=10&TTIP=>

  

第3-3 1800~2000kHz 周波数利用状況

  

 1) 1800~1810kHz:1次業務 無線標定

      ロランAが廃止されたため、現在この周波数の具体的な周波数割当計画は存在しないようです。

2) 1825~1907.5kHz:2次業務 無線標定(漁業用ラジオブイ)

      ITU第3地域の周波数割当では、アマチュア業務が最上位に位置付けられていますが、日本では無線標定移動局

   漁業用ラジオブイ2次業務として以下8波の周波数割当計画が策定されています。

     全出の周波数割当計画では、この周波数の漁業用ラジオブイには使用できる海域の指定があります。

   ①1835kHz ②1865kHz ③1870kHz ④1872.5kHz ⑥1875kHz ⑥1885kHz ⑦1887.5kHz ⑧1890kHz

     

  「北緯50度の線東経160度の線、北緯0度の線及び東経110度の線に囲まれた海域を除く」

       この海域を添付↓の地図で確認すると以下の地図の区域がほぼすべてが含まれています。

       すなわち「この地図全域で漁業用ラジオブイは使用できない」事になります。

     この背景には、ロランAへの干渉を避けるため、日本沿岸の漁業ではなく、東太平洋、インド洋、大西洋など

    「遠洋まぐろはえ縄漁」の漁業用のラジオブイとして許可されていると思われます。

      無線標定移動局の免許を有する漁船リストは以下よりダウンロードできます。

   <https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?SC=1&pageID=3&SelectID=5&CONFIRM=0&OW=MR+0&IT=&HC=&HV=&MK=&TSNJK=&KHS=&FF=1800&TF=1900&HZ=2&NA=&DFY=&DFM=&DFD=&DTY=&DTM=&DTD=&SK=2&DC>

  注 近海まぐろ・かつお漁船に登録の第十八和丸1870kHz A1Aは「日本近海」では使用できません

 

   上記の漁船4隻は、この海域でラジオブイを使用することができる水産庁が公開している漁業法第52条に基づく

   指定漁業の許可船名簿のリストに含まれていません。(平成31年1月1日現在)

 <http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/sitei/>  (遠洋まぐろ・かつお漁業のリストを参照)

    したがって断言はできませんが、「漁業用ラジオブイの無線標定移動局の免許を有していても実際には

    ラジオブイを使用していない」可能性が高いと推察できます。

 

 国土地理院より 日本の東西南北端点の経度緯度  <http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/center.htm>

→この地図に示されたの海域では2)の前記①~⑧の周波数のラジオブイは使用できません。

 

3) 1912.5~2000kHz:2次業務 無線標定(ラジオブイ)

  1912.5~1920kHzまでの周波数を利用する無線標定局はありません。

  1920kHzより高い周波数で主として漁業用ラジオブイとして割当計画が策定されている。

 漁業用ラジオブイ(無線標定移動局)に割当されている周波数は以下のように8波あります。

 ①1920kHz ②1921.25kHz ④1922.5kHz ⑤1923.75kHz ⑥1972.5kHz ⑥1976kHz ⑦1977.25kHz ⑧1978.5kHz

    注)1972.5kHzは海上保安用となっている。

 2018年7月24日現在、この8波に対して491隻の漁船に漁業用ラジオブイが免許されている。

 

 使用可能な海域 全海域(全世界)ですが一部日本近海の限定があります。

 <https://www.tele.soumu.go.jp/area/AreaallsearchServlet?FLOW=1900&FHIGH=2000&HZ=2&YOUT=000&LOCT=000&S_CNT=1&E_CNT=10&P_CNT=10&TTIP>

 

 無線標定移動局の免許を有する漁船リストは以下よりダウンロードできます。<https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?SC=1&pageID=3&SelectID=5&CONFIRM=0&OW=MR+0&IT=&HC=&HV=&MK=&TSNJK=&KHS=&FF=1900&TF=2000&HZ=2&NA=&DFY=&DFM=&DFD=&DTY=&DTM=&DTD=&SK=2&DC>

 

 ジオブイを使用する、まぐろ・かつおなえ縄漁の操業許可について、水産庁が公開している漁業法第52条に

   基づく指定漁業の許可船名簿(平成31年1月1日現在)からこの8波のラジオブイの無線局免許を持つ漁船を検しま

  したが、操業許可漁船名簿には掲載されていない漁船もありましたが、ラジオブイの無線局免許を持つ漁船数が

  多く、日本近海で操業するためこの周波数の割当は難しいと推定できます。よって1920kHzを越える周波数の

 アマチュア業務の利用は難しい事が推定されます。

  水産庁の漁業操業許可リスト掲載のWebアドレス

 <http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/sitei/>  (遠洋まぐろ・かつお漁業のリストを参照)

 

 技術基準適合証明等を受けた機器の検索

<https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=js01>

    漁業用ラジオブイの技術適合認定基準第2号の2に規定する特定無線設備の認定機種リスト

  ・<https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=jk01&NUM=&NAM=&FOM=&PC=&ERA_FROM=1&YAR_FROM=&MON_FROM=&DAY_FROM=&ERA_TO=1&YAR_TO=&MON_TO=&DAY_TO=&RAD=02-02-02-00&TEC=1&TEC=2&TEC=3&TEC=4&TEC=5&TEC=6&TEC=7&SK=0&DC>

 

 新スプリアス規定で38機種 旧スプリアス規定で21機種 型式認定を受けている。

 

 ・特記事項

 新スプリアス規定認定機種38機種の指定周波数を見ると、多くの認定機種で1800~1900kHzの周波数が含まれて

  いません。

   したがって、少なくとも平成34年12月以降は、1800~1900kHzで使用できるラジオブイは以下の大野無線8機種

  のみとなります。

 また、水産庁の漁業法第52条に基づく指定漁業の許可船名簿をみても、1800~1900kHzの周波数を使う漁船

  (無線局)は無くなる可能性が非常に高いと推定できます。

 ラジオブイ 認定機種1920kHz~2000kHzの以下の写真のような認定機種があります。

   <http://www.ohno.co.jp/product2007/306.html>

  

第3-4 1800~2000kHz まとめ

 

1)   1800~1810kHzの無線標定業務は、すでに廃止されているロランAの周波数割り当てがそのまま残っていると

       推定されます。

       ロランAが廃止された現在この周波数を割り当てられている無線局はないと推定されます。

2) 1835~1890kHz  漁船4隻 8波

 ①1835kHz ②1865kHz ③1870kHz ④1872.5kHz ⑥1875kHz ⑥1885kHz ⑦1887.5kHz ⑧1890kHz

  この 8波のラジオブイは、前出別地図に示す日本近海では使えません。

  このラジオブイの無線局免許を所有する漁船は水産庁の漁業法第52条に基づく指定漁業の許可船名簿にも掲載

    されていないため、ラジオブイの無線局免許を有していてもこの周波数で許可される海域での操業許可を有して

    また免許の有効期限は、旧スプリアス規格の使用期限(平成34年11月30日)となっています。

  現在この周波数のラジオブイの無線局免許を所有している漁船は、実際ラジオブイを使用できる海域で操業

    できる水産庁の漁業法第52条に基づく指定漁業の許可漁船名簿に掲載されていません。

  よって、少なくとも平成34年12月以降はこの周波数のラジオブイ無線局の免許は無くなると推定できます。

 

3)  1890~1920kHzまでの2次業務の漁業用ラジオブイ(1907.5~1912.5kHzアマチュアバンド含む)

     この周波数に割り当てられている無線標定移動局(漁業用ラジオブイ)の無線局はありません。

     1987年WARC MOB-87(移動業務に関する世界無線通信主管庁会議以下GMDSSに略)への移行でこの

     周波数のラジオブイは、1600kHz/1700kHz/1900kHz帯に移行が完了したと思われます。

 

4) 2次業務として無線標定移動局(漁業用ラジオブイ)が免許されています。

   ・1920kHz~1978.5kHz  漁船491隻 8波 

    1920~1978.5kHz 8波は全世界の海域で使用できます(一部に日本近海の限定あり)

   ①1920kHz ②1921.25kHz ④1922.5kHz ⑤1923.75kHz ⑥1972.5kHz ⑥1976kHz ⑦1977.25kHz ⑧1978.5kHz

   また周波数のラジオブイの無線局免許の有効期限は、すべて旧スプリアス規定使用期限平成34年11月30日)

 と同じになっています。新スプリアス規定機種も38機種あることから、この周波数の2次業務ラジオブイの無線

 標定局は残ると推定されます。

  

5) 1)~4)までの1次、2次業務としての無線標定移動局の無線局免許の割り当て状況を考慮すると1.8MHz帯の

     アマチュアバンドは、少なくとも海外局同様に1800~1850kHzまでのバンド拡張の可能性があります。

  

6) さらに「周波数利用計画」の漁業用ラジオブイの指定周波数となっていない1850~1920kHzは、アマチュア

  バンドとして拡張できる可能性があります。

 

7) 以上より、1.8MHz帯のアマチュアバンドとして利用可能な周波数範囲は、1800~1920kHzと120kHzの拡張の

  可能性があることから、海外局同様に1.8MHz帯でSSBの運用の可能性もあります。

     少なくとも1800~1810kHzと1825~1850kHzが利用できるだけで、Region1同等になるので、デジタル通信の

  利用によるDX交信とコンテストでの得点向上が期待できると思います。

     さらに1850~1920kHzまで使用できれば、1.8MHz帯でのSSB交信も可能になります。

 

第3-5 1800~2000kHz の2次業務無線標定移動局の免許を考慮した

    1.8MHz帯アマチュアバンド(案)

 

第1案 CWおよび狭帯域デジタル通信でのアマチュアバンドの国際協調を重視

第2案   1800~1920kHzの主に漁業用ラジオブイ:無線標定移動局の周波数利用実態を反映