総務省総合通信基盤局
電波部電波環境課  
案件番号    145209475
案件名     陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集


「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち「構内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」 -


1.意見提出者
氏名  佐藤秀幸
メール jj1ruf@arrl.net
2.募集案件に対する総合的意見
反対

3.反対理由

 

1)  空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの目的
 ・おおよそ10mの範囲に電力を伝送する
 ・伝送する電力は、受託側で10~100mW
 ・電力伝送範囲に高い電力効率で電力を伝送する
    ・使用する周波数は、国際的に共通で利用できるISMバンドの内
  920MHz/2.4GHz/5.7GHz帯を使用する  
    ・この周波数を利用する理由は、アンテナの小型化、鋭い指向性を
  を設定できる
2) 空間に伝送した電磁波防護指針を遵守する
  提案された技術条件で電磁波防護指針を満足できているのは、
     920MHz帯のみであり、2.4GHz/5.7GHz帯は伝送領域に人が
   いる場合は、電力伝送を停止する機能を設けている
上記2項目の両立ができる技術条件となっていないため

4.反対理由の詳細
反対意見の大前提
本空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、 内閣府の戦略的イノベーション
創造造プログラムの第2期研究開発計画のテーマの一つである
「IoE社会のエネルギーシステム」において、屋外での給電
(ドローン(インフラ維持・管理))及び屋内での給電(センサーや情報機器等)
等の取り組みが推進する事業の一環である。
よって、我が国の税金全体では数兆円を投入して開発を行う。
我が国の税金を投入して 開発を行うためには、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送
システムの開発するための目的と開発効果を現実的かつ技術的に検証して
税金の無駄使いにならないことが必要である。
しかし、下記技術的要素を勘案すると本空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム
特に 920MHz/2.4GHz/5.7GHz帯を使用する本構内における空間伝送型ワイヤレス
電力伝送システムは空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの開発するための目的と

 

開発効果を現実的かつ技術的に検証していない。

検証する技術的要素
1) 自由空間伝搬損失
伝搬損失L(dB)=10log(Pt/Pr)=10log(4πd/λ)^2=20log(4πd/λ)
Pt:送信電力 Pr:受信電力 d:相互間直線距離 λ:電磁波の波長
logの底は10とする
この理論より受信電力Prは。
・周波数(波長)に反比例する
・相互間直線距離の2乗に反比例する
以上より、既存の電力伝送に使用されている周波数帯100kHz~13.56MHz
と比較しておおよそ300~1000倍伝搬損失が大きくなるため、高い受信
電力を大きくするには、この周波数比率だけ大きな送信電力を増やす
必要がある
2) 電波防護指針の限界距離 920MHzでの条件
 ・電力束密度 S (mW/cm^2) = (PG/40πR^2)×K
    ・電波豪語指針の限界距離 R (m) =(PGK/40πS)^0.5
    P:空中線電力(送信電力)  G:空中線利得(dBi)  K:反射係数
 K反射係数は、伝搬空間の電磁波の反射電力量を考慮して決める
 ・反射なし:1  電磁波防護指針の限界距離R = 0.507m
    ・大地面の反射を考慮:2.56   電磁波防護指針の限界距離R = 0.811m
 ・伝搬空間に電磁波を反射する物体により反射を生じさせる場合 10.2
     電磁波防護指針の限界距離R = 1.619m
  空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムで使用する周波数帯
    920MHz / 2.4GHz / 5.7GHz帯では、使用想定されている会社オフィス
 病院、学校などの施設では、鉄筋コンクリート製ビルであり、室内には
 金属製のキャビネット、各種金属を使用している機器が多数あり、
 反射係数1の反射なしの条件は極めて少ない
 しかし、本ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件では、反射なしの
 条件で電磁波防護指針を計算している事例で適合性を設定している
 さらに2.4GHz / 5.7GHz帯では、人の有無を検出装置を設ける条件
 となっていることから、本 ワイヤレス電力伝送システムが利用できるのは、
 無人である場合となり、ワイヤレス電力伝送システムを利用できる条件が
 限られる。
 この条件を満たすための ワイヤレス電力伝送システムを開発する意味が
 あるのか否かがはなはだ疑問がある。
 
3) 電磁波防護指針を満足させるための手段の有効性
 電磁波防護指針を満足させるための手段として、電力伝送側のアンテナの
 指向性を非常に鋭くして、限られた範囲に電力を伝送する、アクティブ
 ビームフォーミング技術を導入することを本 ワイヤレス電力伝送システム
 の使用想定している。
 しかし、使用想定において「アクティブビームフォーミング」を実現させる
 には、対象周波数帯の波長6~30cm単位で電磁波の位相制御が必要であり、
 本ワイヤレス電力伝送システムの技術条件では、位相制御を実行するための
 システム電力効率を考慮していない。
 よって本ワイヤレス電力伝送システムの技術条件である 、
 高い電力伝送効率を実現するのは難しい。 
 
4) 高いワイヤレス電力伝送システムを実現させるための条件
 
 本ワイヤレス電力伝送システムの基本原理は、「ゲルマニュームラジオ」
 と同じである。
 基本原理に沿って本ワイヤレス電力伝送システムを実現させる技術条件は、
 ・アンテナ(レクテイナー)を含む共振回路のQ値は、「Quality Factor」 
  を例えば50以上の高い値とする必要がある。
 ・本ワイヤレス電力伝送システムで使用する手段となっている
   アクティブビームフォーミング」を構成する高誘電率アンテナは
  一般的にQ値は10程度である。
  受電側のアンテナも 同様に高誘電率アンテナを使用しているため、
  ワイヤレス電力伝送システムの技術条件である、高い電力伝送効率を
  実現するのは難しい。  
 
以上